学校が変わるICT実践研究 Sakyo

ICT支援員として各校で頼まれた仕事の中から、他校でも使えそうなアイデアやツールを紹介します

【解説】汎用電子化ソフト「コピーくん」の可能性

1 はじめに
 前回、紙の時代も含めて4枚の類型図を作成して、通信簿等の文書電子化について分
してみました。その中でエクセルソフト「コピーくん」の存在に触れました。今回は「コピーくん」についてくわしく解説してみたいと思います。 

 

2 コピーくんの概念
(1) コピーくん開発の経緯
 平成23年度に勤務していた学校で、通信簿を電子化することになりました。当時、通信簿はまだ印刷所に頼んでいたと思います。ほとんどの学校で手書き、電子化の先進校でも所見のみシールにして貼り付けるという時代でした。もしかすると、すでにエクセルのVLOOKUP関数で作成していた学校もあったかもしれませんが、昔のことなのでよく覚えていません。
 さて、ゼロからの出発でしたので、手分けして開発することにしました。通信簿の枠は研究主任に作ってもらい、それ以外の部分を私が担当することにしました。この仕事をよくされている方は「何か変」と思われるかもしれません。普通は枠が先にあり、それに設定を加えていきます。それなのに、枠がないなんて?
 まあ、そうなのですが、楽天的な私は「何とかなるだろう」という気持ちで引き受けました。当時、VLOOKUP関数は使いこなせていましたが、同時に行き詰まりも感じていました。一番のネックは所見への対応です。エクセルの画面表示と印刷結果が異なることや、各学級担任により所見の分量が違うこと、もちろんパソコンのスキルも違うこと等、考慮しなければならない問題がありました。
 どこから、コピーくんのアイデアを得たのかは覚えていませんが、今回まとめた電子化の類型図のような発想はすでに当時の私の中にあったのでしょう。一覧表から個人ごとのファイルへ、人間の代わりに全部写してくれるソフトを開発しようと思ったみたいです。 

 マクロについてはまだそんなに詳しくはなかったのですが、(今でも詳しいとは思っていませんが…)幸いインターネット上に参考になるサイトがたくさんありました。もっとも頼りになったサイトが「Office TANAKA」です。本当に勉強になりました。当時私は教員でしたから、仕事の合間にソフト開発なんて無理でした。夏休みに一気に作り上げたのが「スーパーコピーくん」と「まとめて印刷くん」です。

(2) コピーくんの画面
 スーパーコピーくんのメイン画面です。学級担任等の使用者が用いる画面です。いろいろ書いていますが、ほとんで説明です。実際に使うのは「ファイル名の指定欄」「番号の入力欄」、「新規作成ボタン」「追加書込ボタン」だけです。

     

 こちらは、スーパーコピーくんの基本設定画面です。担当者が設定を指定するときに用いる画面です。 

     

(3) コピーくんの使用方法
① 参照元になる一覧表(データベース)と様式の枠を用意します。実はこれが一番時  間がかかります。フォントの設定やセルの書式設定等をきちんとしておかないと、後で
困るからです。
② 基本設定を書きます。データベースと様式の枠を印刷して、画面を見ながら、セル番地をメモします。そのメモを見ながら、間違えないように基本設定を打ち込みます。
エラーが発生した場合は、ここの情報が間違っています。(コピーくん本体のマクロ
のエラーではありません。)
③ メイン画面に戻って動作チェックをします。上手くいったら完成です。

(4) コピーくんの可能性
①  説明のために用意した画面は、通信簿用ではありません。つまり、エクセルのファ
イルであれば、何でもコピーできます。
②  マクロを組めなくても使用できます。「(3) 使用方法」で説明した通り、ブック
名、シート名、セル番地を指定できる能力さえあれば使えます。
③  図1のタイプならば、「学級担任が入力」の部分を「コピーくん」と置き換える
とで、入力作業が不要になり、ずいぶん楽になります。 

          

④  図2のタイプ(VLOOKUP関数)の場合でも、このファイル自体をデータベー
スと様式の枠とみなすことで、個別のファイルを出力できます。(あまり、やらない
でしょうが…)

 ちなみに令和4年度に作成した「調査書XR5.xlsm」は、コピーくんのエンジンを
内蔵しています。個人のファイルを印刷するだけでなく、出力して手直しすることが
できます。


(5) コピーくんの制限事項
①  コピーくんで扱うエクセルファイルは、Excel97-2003ブック形式(拡張子.xls)
す。誤って、拡張子を.xlsxなどに変更してしまうと動作しません。
②  個別ファイルのファイル名の形式が決まっています。
    共通部分1.xls 共通部分2.xls 共通部分3.xls …
 共通部分は指定できます。ファイル名の最後が連続番号になっています。連番ファイルと呼ぶこともあります。このファイル名を勝手に変更してしまうと、動作しません。

(6) コピーくんのバージョン
①  スーパーコピーくん平成23年度の最初のコピーくん。
②  エクセルデータ=コピーくんVer.1.00斜線機能追加版平成24年
生徒指導要録様式2に対応させるため、メイン画面を刷新し、斜線をひく機能を追
加。現在も使用中。「スーパーコピー」という名前を嫌い、変更。名前が長いので
単に「コピーくん」と略記。
③  コピーくんX … そのうち作ろうと思っている最新バージョン。
 ・新しいファイル形式(.xlsm .xlsx)にしたい。
 ・ファイル名に個人名を含むようにしたい。
 ・メイン画面と基本設定画面を整理したい。

 

3 おわりに
 今回は、「コピーくん」についてまとめてみました。ずっと昔に作ったマクロながら、きちんと動作するため、現在でも使用しています。新しいソフトであればまだ見つっかっていないバグがあるかもしれませんが、コピーくんは、年数が経った分、信頼性が高いと言えます。
 また、開発者にとってうれしいのは、新しいプログラムを作成するとき、ただ単にセル番地を調べるだけでいいという手軽さです。これにより、プログラム作成時間が、大幅に短縮されます。(むしろ、データベースや、様式の枠の設定の方が時間がかかります。)
 使用者にとってうれしいのは、訂正するときに個別ファイルを直せばよいという分かりやすさだと思います。VLOOKUP関数では真似できない仕様になっています。
 一方、残念な点も幾つかあります。一番は「コピーくんの概念が使用者に伝わりにく
」ことです。汎用ソフトとして便利すぎる分、専用ソフトの分かりやすさに負けているところがあります。最近、私が通信簿等を作成するときにVLOOKUP関数を使用するのはそのためです。
 ただし、現在の電子化のタイプが、図1であれば、今すぐにでも使えます。即効で状況が改善します。