学校文書の電子化を考える(通信簿編その2)
1 はじめに
前回の考察中に、電子化の類型を図にすることを思いつきました。紙の時代も含めて4枚の図を作成し、比較してみました。
2 電子化の類型及び所感
(0) 電子化前「紙の時代」
すべてが紙の時代の図です。「所見の作成」が大変なのは、誰でも想像がつくと思います。実は、地味に嫌なのが「転記作業」です。個人差はあるでしょうが、学級全員分を書き上げる頃には手が痛くなる大変な作業が、割と最近まで行われていました。間違えたときには直すのが大変だったのも、この時代です。
(1) 生徒個人ごとのファイル(ワープロ、表計算など)に直接入力するパターン
(0)の「転記作業」が「入力作業」に変わりました。場合によっては「コピーペースト」も使えます。ただ、「ABC12345〇」などは、書いたほうが速いように思えます。手が痛くならないのはラッキーかもしれません。間違いがあったときは、個人のファイルを直接直し、もう一度印刷します。パソコンが苦手な教員でも、操作が比較的分かりやすいのも、この方法のよさです。
(2) エクセルのVLOOKUP関数の機能で、一覧表に入力したデータが参照される仕様になっているパターン
現在のトレンドがこの形態です。一覧表と枠が一体化し、VLOOK関数で結び付けられているので、転記ミスは起こり得ない仕様になっています。しかし、「画面表示と印刷結果が違う」というエクセルの仕様のため、レイアウトのチェックが必須です。そして、(1)と違い個人のファイルというものがないので、間違いを直すとき、一覧表まで戻らなければなりません。これが結構手間です。
(3) エクセルソフト「コピーくん」を使う方法。
ほとんど無名の「コピーくん」です。(2)の図と比べると、「転記作業」を行うのが人間からコピーくんに置き換わっただけです。機械の仕事ですから、この段階でのミスは生じません。修正作業は、出力された個人のファイル上で行います。つまり、最終段階での作業も(2)と同じなので、パソコンが苦手な方でも分かりやすいかと思います。
3 おわりに
今回、学校文書の電子化の類型を図にしたことで、私自身非常にすっきりしました。
どの形態をとっても、結局「転記作業」を機械化しただけというのが、現在の電子化の正体と言えるのではないでしょうか。そして、学級担任にとって時間的にも精神的にも一番負担なのは「所見作成」であることに異論はないでしょうから、これは電子化では解決できない問題といえます。担当者がせっかくの厚意で作成した「通信簿用ソフト」が、さほど喜ばれないのは、こんなところに原因があるのかもしれません。
追記1)
本題とはちょっと違いますが、前回でも紹介した「通信簿から所見をなくす」取り組みの方が、教師の働き方改革上「電子化」以上の効果があることも、今回の図から読み取れました。
追記2)
図にしたことで「コピーくん」の機能を再確認しました。通信簿は、上手に作れば
(2)のVLOOK関数でいいかなと思っていたのですが、初心者のことを考えると「コピーくん」もありかなという気もしてきました。